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「日程調整」で終わるアポが商談につながらない理由|課題を引き出すヒアリングの設計

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アポは取れている。なのに、商談が前に進まない。

新規開拓の現場で、いちばん多く聞く悩みです。アポの数は足りているのに、初回商談がいつも空回りし、受注につながらない。その原因を、温度感の高いアポが来ないからだと考えているとしたら、伸ばせる余地はまだ大きく残っています。

まず、こんな状態に心当たりがないか、確かめてみてください。次の6つのうち、3つ以上当てはまるなら、アポの数ではなくで伸ばせる状態です。

  • アポ数は目標を達成しているのに、その先の受注が増えていない
  • 初回商談が、毎回「本日は何をお話ししましょうか」の探り合いから始まる
  • 引き継ぎメモが「情報収集をしたいとのこと」程度で、商談の準備ができない
  • 商談担当から、最近のアポは質が低いと言われる
  • 温度感の高いアポが来ないことが、成果の出ない原因だと思っている
  • アポを取る人によって、質が大きくばらつく(再現性がない)

当てはまる項目が多いほど、伸びしろがあります。原因の多くは、温度感でも運でもありません。何をもって「良いアポ」とするかの定義と、その取り方、つまりヒアリングの設計にあります。

先に結論をお伝えします。良いアポとは、日程が取れたアポではなく、「課題について話す場」として相手と合意できているアポです。そしてこれは、特別な才能ではなく、聞き方の設計で再現できます。本記事では、(1)「日程調整」と「良いアポ」はどこで分かれるのか、(2)なぜ課題を聞くのか、(3)潜在層から課題を引き出す具体的な聞き方、の順に解説します。

ただし、はじめに一つだけお断りしておきます。良いアポは、受注の必要条件であって、十分条件ではありません。どれだけ課題に合意できても、その先の初回商談で、商談担当(フィールドセールス)が話を提案・受注へと引き上げなければ、受注には至りません。アポの質は、アポを取る側(インサイドセールスやBDR)だけで完結する話でも、それだけで受注が決まる話でもないのです。受注とは、良いアポを作る工程と、その商談を受注へ引き上げる工程をつなぐ、一本のバトンリレーです。本記事はその前半、良いアポを作るところまでに絞ってお話しします。後半にあたる初回商談の設計は、同じくらい重要なテーマとして、別記事【アポは取れているのに受注が増えない理由|初回商談を「有効商談」に変える3つの設計】で詳しく扱っています。


アポは取れているのに受注が増えない理由|初回商談を「有効商談」に変える3つの設計

アポは増えているのに受注が伸びない——原因は「有効商談化(SAL→SQL転換率)」にあります。初回商談を有効商談に変える3つの設計を、明日から自社を測れる指標つきで解説します。

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はじめに:これはトーク術の話ではありません

私たち自身、新規開拓(アウトバウンド)を事業の一つとして手がけています。だからこそ本記事では、小手先のトーク術ではなく、なぜ、それを聞くのかという考え方を中心にお伝えします。考え方さえ腹落ちすれば、質問は尋問ではなく自然な対話になり、相手も身構えません。

この記事でわかること

  • 「日程調整」と「良いアポ」は、どこで分かれるのか
  • なぜ、温度感が低くても良いアポは作れるのか
  • 潜在層から課題を引き出す、ヒアリングの型(選択肢と深掘り)

「日程調整」と「アポ」を混同していないか

良いアポが作れないとき、その背景にはたいてい2つの混同があります。

混同(1):アポとは「会う約束(日程調整)」のことだ、と思っている

多くの現場では、会う約束が取れたことをアポ獲得と呼びます。しかし、ただ日程が埋まっただけの商談は、相手が時間を割く理由を持っていません。「とりあえず話を聞いてみるか」で設定された場は、初回商談で「で、本日は何を?」という探り合いになり、そこから先へ進みません。

本当に良いアポとは、日程が決まっていることではなく、これは〇〇という課題について話し合う場だ、と相手と合意できている状態を指します。日程は、その合意に付いてくるものにすぎません。

なお、会う約束とアポは別物だという考え方は、新規開拓全体の設計を扱った別記事【新規開拓は、手法選びではなく「設計」で決まる|「とりあえずアウトバウンド」が失敗する理由】でも、4つの設計の一つとして取り上げています。本記事は、その課題合意をどう取るかを掘り下げたものです。

混同(2):温度感が低い=質が低い、と思っている

今すぐ欲しいかという温度感と、話を聞く理由があるかという課題合意は、別の問題です。

ここで強調しておきたいのは、これはアウトバウンドだけの話ではない、ということです。たしかに、こちらから接点を作りにいくアウトバウンドの相手は、まだ課題を自覚していない潜在層が中心です。ただ、温度感の低いリードは、インバウンドにも当たり前に存在します。資料請求や、まずは話だけ聞いてみたい、といった問い合わせは、関心がまだ薄く、課題も固まりきっていない、潜在に近い状態です。つまり、温度感の濃淡はチャネルを問わず生まれます。インバウンドのリードに対応しているから大丈夫、とは限らないのです。

そのうえで申し上げると、温度感が低いこと自体は、問題ではありません。温度感が低くても、これは確かに自社の課題だ、という合意、つまり話を聞く理由は作れます。逆に、課題合意のないまま設定したアポは、それがインバウンド由来でもアウトバウンド由来でも、温度感に関係なく、相手にとってはただの売り込みになってしまいます。最初から温度感の高い相手にばかり出会えるのは運であって、それを待つのは再現性のある営業とは言えません。

そして、課題合意のないアポを次々に渡すと、何が起きるか。商談を担当する人は、毎回ゼロから探り合いをすることになり、貴重な時間を消耗します。それが積み重なると、この新規開拓のやり方は受注につながらない、という評価につながり、施策そのものが続かなくなります。アポの質は、現場の疲弊と施策の寿命に、直接つながっているのです。

なぜ課題を聞くのか ― 3つの意義

ここで、ヒアリングの考え方の変化に触れておきます。法人営業では長く、BANT ― 予算(Budget)、決裁権(Authority)、必要性(Need)、導入時期(Timeframe)― という枠組みが使われてきました。近年は、これに競合や推進体制を加えたBANTCHという整理もあります。ただ、これらはもともと、売り手が「この相手は自分の時間を使う価値があるか」を見極めるための、いわば足切りの発想から生まれたものです。

実務で気をつけたいのは、この中でも予算(B)と導入時期(T)は、初回の接点ではとくに聞きづらい、という点です。まだ課題も固まっていない潜在に近い相手にとって、予算や時期は、そもそもまだ存在していないことが多いからです。予算は価値を感じてから組まれ、時期は課題がはっきりしてから決まる。それを初対面でいきなり尋ねると、相手は答えようがないうえに、品定めをされている印象を受けて、身構えてしまいます。

だからいま、法人営業の重心は、BANTのような売り手起点の条件確認から、相手の課題とその影響を起点に置く考え方 ― 海外でMEDDICやSPICEDと呼ばれる、課題起点のフレームに代表される流れ ― へと移ってきています。問われているのは、項目を順番に埋める段取りよりも、相手の課題をどれだけ深く理解できているか。そして、なぜそれを聞くのか、という目的のほうです。

課題を聞く意義は、大きく3つあります。

① 買い手のため

温度感の低い相手は、自分の課題をまだ言葉にできていないことがほとんどです。良いヒアリングは、相手から情報を引き出すものではなく、相手自身の頭の整理を助けるものです。だからこそ、いきなり質問を並べるのではなく、後述する選択肢の提示が効きます。聞くこと自体が、相手にとっての価値になるのが理想です。

② 次の商談のため

課題を握るのは、次に商談へ出る人が、探り合いをせず最初から価値を出せるようにするため。言い換えれば、良いアポとは、次の商談の準備がすでに整っているアポです。誰が引き継いでも同じように動ける。営業では、これを次の工程へ進めてよいかを見極める通過条件と呼びますが、この基準を持てるかどうかで、最終的な受注率は変わってきます。

③ 仕組みのため

課題、その影響、現状の対策、決裁の流れを記録に残すと、後から、どんな課題を持ったアポが受注につながりやすいかを振り返れるようになります。アポを取れた数ではなく、どんな質かで管理できるようになり、アポが受注の先行指標に変わります

この3つの意義が腹落ちしていれば、質問は尋問ではなく、純粋な関心として相手に伝わります。次の聞き方も、テクニックである前に、この目的の上に立っています。

良いアポを、1つの文で定義する

では、何が取れていれば良いアポと言えるのか。判断をシンプルにする方法があります。アポを取った人が、引き継ぎのときに次の1文を語れるかどうかです。

このお客様は、〇〇という背景から、〇〇という点において、自社の〇〇がお役に立てそうだと考えています。

この1文が語れるアポは、課題が見えています。語れないアポは、まだ日時を決めただけの状態です。シンプルですが、現場で良し悪しを肌感覚で判断するより、はるかに再現性があります。

ここで注意したいのが、事象を聞いて満足してしまうことです。たとえば、新規開拓に困っている。これはよく聞く言葉ですが、まだ事象にすぎません。なぜ困っているのか。人手が足りないのか、当てるリストが尽きたのか、やり方が分からないのか。その背景まで掘って初めて、先ほどの1文が完成します。

どう聞くか ― 潜在層から課題を引き出す「選択肢と深掘り」

考え方が定まったら、聞き方です。ここでは、現場でそのまま使える型を紹介します。

鉄則:一問一答(尋問)にしない

「ご予算は?」「決裁者はどなたですか?」と順番に聞くのは、相手にとっては尋問です。まだ関係のできていない相手は、警戒して本音を話してくれません。

まず、「聞く理由」をひと言で渡す

質問の前に、なぜ聞くのかを伝えて、場の合意を取ります。たとえば、こう切り出します。

「せっかくお時間をいただくので、当日できるだけお役に立つ情報をお持ちしたいと思っています。そのために、いくつかだけ教えていただけますか」

これだけで、相手は身構えずに話してくれます。先ほどの意義の①、買い手のため、をひと言の形にしたものです。

課題を引き出す「選択肢と深掘り」

潜在層に「課題は何ですか」と聞いても、たいてい答えは返ってきません。代わりに、次の流れで引き出します。各ステップの例を一つずつ挙げます。

  1. 選択肢を提示する ― 「よくあるのはA・B・Cあたりなのですが、しいて言えば、どれがいちばん近いですか?」。白紙で聞かず、考えるとっかかりを渡します。
  2. 背景を深掘りする ― 「ありがとうございます。差し支えなければ、それを選ばれた背景を、少しだけ伺ってもいいですか?」。事象を背景まで掘ります。
  3. 影響を確認する ― 「それが続くと、たとえば件数や時間の面で、どのくらいの影響になりそうですか?」。課題の大きさを一緒に見える化します。
  4. 現状の対策を確認する ― 「いま、それを解決するために、社内で何かされていることはありますか?」。競合や代替手段が分かります。

特に3つ目の影響の確認は、見落とされがちですが重要です。温度感が高くなくても、放っておくとこれだけの影響が出る、と一緒に確認できれば、相手の中に、今こそ向き合うべき理由が生まれます。温度感に頼らず、課題の大きさで前に進めるための一手です。

「決裁の流れ」は、直接聞かない

「あなたは決裁者ですか」とストレートに聞くと、角が立つうえ、見栄が混じって実態がつかめません。やわらかく確かめるなら、たとえばこう尋ねます。

「もし、今回の話がすごく良いとなった場合、社内ではどのような流れで進んでいくものですか?」

仮定の質問にすると、相手は構えずに、実際の決裁の流れを教えてくれます。あるいは、過去の事例からたどる方法もあります。

「ちなみに、過去に同じようなサービスを導入されたときは、どのような流れで進んだのですか?」

どちらも、相手を問い詰めずに、決裁の実態を引き出すための聞き方です。

会う約束の段階で課題を握れなかったら

日程調整の電話だけでは課題まで握りきれないことはあります。そのときは、課題のないまま面談を迎えるのではなく、面談の前に、短い事前ヒアリングの電話を一本入れることをおすすめします。5分、10分でも、当日の解像度はまったく変わります。課題合意のないアポは、そのまま次へ渡さない。この一手間が、初回商談の質を底上げします。

明日からの第一歩

読むだけで終わらないよう、すぐ着手できることを3つ挙げます。

  1. 自社の「アポの定義」を見直す ― 日程が取れた、ではなく、先ほどの1文が語れる、をアポの合格ラインにする。
  2. 引き継ぎメモの項目を変える ― 背景・課題・影響・現状の対策・決裁の流れを残す欄を作る。埋まらないアポは、まだ課題が見えていないサインです。
  3. 直近のアポを2つに仕分ける ― 会う約束が取れただけのものと、課題を合意できたもの。後者の比率が、いまのアポの質の実力です。

まとめ ― アポの質は、運ではなく設計で決まる

アポが商談につながらないのは、温度感が低いからでも、運が悪いからでもありません。日程調整で止まっていて、課題の合意まで作れていないからです。

そして課題合意は、聞き方の設計で再現できます。一問一答をやめ、聞く理由を渡し、選択肢から課題・影響・対策・決裁の流れを引き出す。会う約束の段階で握れなければ、面談前にもう一本。これだけで、次に渡すアポは見違えます。

最後に、2つの問いをお渡しします。

定義:自社が「アポ獲得」と呼んでいるものは、会う約束で止まっていないか。それとも、課題を合意したアポか。

再現性:その良し悪しは、特定の人の勘ではなく、誰が見ても同じ線引きで判断できる状態になっているか。

この2つに、はい、と言えるようになったとき、アポは数から質へと変わります。そして、そうして課題を合意したアポを初回商談でどう受注へ近づけるかは、冒頭でも触れた別記事【アポは取れているのに受注が増えない理由|初回商談を「有効商談」に変える3つの設計】で扱っています。


アポは取れているのに受注が増えない理由|初回商談を「有効商談」に変える3つの設計

アポは増えているのに受注が伸びない——原因は「有効商談化(SAL→SQL転換率)」にあります。初回商談を有効商談に変える3つの設計を、明日から自社を測れる指標つきで解説します。

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私たち自身も、ご支援先では、日程調整の段階で課題を握れなかった場合、面談の前に必ず別途ヒアリングのお時間をいただいています。課題合意のないアポは、次に渡さない。これを徹底しています。

もし、自社のアポの通過基準づくりやヒアリングの設計を見直したいときは、お気軽にご相談ください。






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執筆:呂 逸云(COELU株式会社 執行役員CSO)