商談の振り返りに使えるAIプロンプト3選|有効商談の判定・フォローメール・自分の進め方の見直し
商談が終わったあと、「感触は良かったです」とだけ報告して、次の一手が決まらないまま数日が過ぎてしまう。商談の録画はあるのに、見返す時間がない。そんな経験はないでしょうか。
先に結論をお伝えします。商談の振り返りにAIを使うなら、材料は営業のメモではなく、相手の言葉です。 そのうえで、何を基準に判定するかという「判断の物差し」を渡せば、振り返りの多くをAIに手伝ってもらえます。
本記事は、「商談準備に使えるAIプロンプト4選」に続く第2回です。今回は、初回商談が終わったあとに絞って、3つのプロンプト(AIへの頼み方の型)を紹介します。ChatGPT、Claude、Geminiなど、どのAIでも使えます。
とはいえ、商談の設計は会社ごとに違います。プロンプトに入れた判定の基準や進め方は私たちの考え方で、すべての会社に最適とは限りません。自社のやり方に合わせて書き換えて使ってください。
この記事でわかること
- 振り返りに、メモではなく文字起こしを使う理由
- 商談の振り返りに使える3つのプロンプト(〔 〕を埋めれば使えます)
- ①文字起こしから「有効商談の4条件」を判定する
- ②相手の言葉を使ったフォローメールを下書きする
- ③自分の商談の進め方を見直す
振り返りに使うのは、メモではなく文字起こし
営業が後から書いたメモや、要点だけをまとめた議事録には、すでに誰かの解釈が入っています。会議ツールが自動で作る要約も同じです。「前向きだった」と書かれたメモを渡せば、AIはその印象をもとに判定しがちです。振り返りには、録画や録音の文字起こしなど、相手の発言がそのまま残っているものを使ってください。録音できない商談では、商談中に、相手が実際に言った言葉を「」で書き分けておけば、①と②に使えます。③は、自分の進め方が残っている文字起こしで使ってください。
使う前に、2つだけ押さえておいてください。1つは、商談の記録は相手から預かった情報だということです。会社として使ってよいAIサービスだけで扱い、会社名や氏名は「A社」「担当者B」のように置き換えてから貼ります。個人向けのプランは、有料でも、初期設定のままだと入力した内容がAIの学習に使われることがあります(設定で止められます)。録音や文字起こしをする場合は、商談の冒頭で相手の了承を得てください。
もう1つは、AIが引用した発言が、元の記録にそのとおり書かれているかを確かめることです。AIは発言を言い換えたり、言っていないことを引用の形で書いたりすることがあります。

商談の振り返りに使う3つのプロンプト
① 文字起こしから「有効商談の4条件」を判定する
初回商談が終わったら、まずこれを使います。その商談が「有効商談」、つまり受注に向けて次に進めてよい商談になったかを、4つの条件で確かめます。
以下は初回商談の文字起こしです。発言者は「相手」「自社」に置き換えて貼り付けています。
〔文字起こしを貼り付け。会社名・氏名は置き換える〕
この商談を、次の4つの条件で判定してください。
1.価値の手応え:相手が自分の言葉で「どの課題に、どう役立ちそうか」を語ったか
2.課題の優先度:「放置できない」という趣旨の発言があったか
3.決裁の構造:誰が、どのように決めるか(決める人・決め方・関わる人)が分かっているか
4.検討の現実性:導入や意思決定の時期の見通しと、予算を確保する手順が見えているか
各条件を「満たす/一部満たす/満たさない(否定的な発言がある)/不明(発言がない)」で示し、根拠となる相手の発言を、言い換えずにそのまま抜き出してください。自社側の発言は根拠にしないでください。自社の確認に相手が同意しただけの場合は、問いと答えをセットで抜き出して「同意のみ」と添え、条件1と2については「一部満たす」までとしてください。条件1は、「かもしれない」のように役立つかどうか自体を留保した発言や、どの課題にどう役立つかが具体的でない発言しかない場合も、「一部満たす」までとしてください。発言がないものは推測で埋めず、「不明」としてください。
判定をふまえて、この案件が次のどれに当たるかを、上から順に確かめ、最初に当てはまったもので示してください。
・1か2が「満たさない」、または「当面は導入しない」という趣旨の発言がある:提案は止め、何が引っかかっているかを確かめたうえで、次に連絡する時期を決める
・1か2が「一部満たす」「不明」:次の商談で、価値の手応えと課題の優先度を確かめ直す
・3か4が「不明」「満たさない」:次の商談で、決め方と、時期・予算の見通しを確かめる
・3か4が「一部満たす」:有効商談として、育てながら追う
・4条件がすべて「満たす」:有効商談として、提案に向けて本格的に追う
あわせて、次の商談で確かめることを3つまで、相手への問いの形で挙げてください。4つの条件では拾えないが、気になる発言があれば、それも挙げてください。
うまく使うコツ:この4条件は、「アポは取れているのに受注が増えない理由」で紹介した、有効商談かどうかを見分ける基準です。初回商談で4つすべてがそろうことは多くありません。「不明」が出たところが、次の商談で確かめることです。
② 相手の言葉を使ったフォローメールを下書きする
①と同じ文字起こしを使って、当日中に送る、お礼を兼ねたフォローメールを下書きします。
以下の文字起こしをもとに、商談のお礼と次回に向けたメールの下書きを作ってください。
〔文字起こしを貼り付け。会社名・氏名は置き換える〕
条件は次のとおりです。
・相手の課題を2〜3行で要約する。課題を表すキーワードは相手の言葉を残し、話し言葉や率直すぎる表現は、相手が上司に転送しても困らない言い方に整える
・要約のあとに、認識に違いがあれば教えてほしいという一言を添える
・お互いに合意した次の一歩(日時、お互いの対応事項、担当)だけを箇条書きにする。その中で決まっていないことは「未定」と書き、決まったように書かない。こちらから提案しただけのことは書かない
・次の打ち合わせをすることは合意したが、日時が決まっていない場合は、最後に候補日を相談する一文を添える(候補日は〔 〕で空けておく)
・相手の上司や他部署、人事についての発言、社外秘と言われた話、他社との取引条件、相手の部署の不備や過去の失敗は書かない
・相手が社内の関係者にそのまま転送しても、内容が伝わる書き方にする
・自社サービスの宣伝は入れない
・宛名と署名を除いて400字程度
うまく使うコツ:相手の言葉で課題を書くと、認識のずれに、その日のうちに気づいてもらえます。初回商談のお礼メールは、上司や関係者に転送されることがよくあります。転送されても伝わる形にしておくと、相手が社内で検討を進めやすくなります。会社名や氏名を置き換えて使った場合は元に戻し、宛名や日時に誤りがないか、送る前に必ず見直してください。
③ 自分の商談の進め方を見直す
①が商談の中身を見るのに対し、③は自分の進め方を見直します。週に1回、①の判定が自分の感触と違った初回商談(感触は良かったのに「不明」が多かった商談など)を1つ選んで使います。
以下は、私(営業担当者)が行った初回商談の文字起こしです。発言者は「相手」「自社」に置き換えて貼り付けています。
〔文字起こしを貼り付け。会社名・氏名は置き換える〕
営業の先輩の立場で、私の進め方を次の5つの観点で確かめてください。
1.冒頭で、自社が何をしている会社で、なぜ今回お役に立てると考えたかを短く伝え、今日の進め方に合意できていたか
2.調べれば分かる状況確認やサービスの説明に時間を使わず、今回の背景、相手の困りごと、それが続いたときの影響、解決したときに変わることの流れで聞けていたか
3.聞けた課題と自社の商材を結びつけて伝え、相手が自分の言葉で「どの課題に、どう役立ちそうか」を話せる問いをしていたか。その前に、予算・時期・決め方や、次回の話に進んでいなかったか
4.相手の発言を掘り下げずに、次の話題に移った場面はないか
5.最後に、相手の手応え(観点3の問いへの答え)に合わせて次の一歩を決められていたか(手応えがあれば、決め方や時期を「もし進めるとしたら」の形で聞いたうえで、次の打ち合わせの日時を決める。薄ければ、何が引っかかっているかを聞き、次に連絡する時期を決める)
それぞれ、根拠となる発言を言い換えずに抜き出してください。記録から分からないことは「確認できない」としてください。
あわせて、自社が続けて長く話した場面を2つまで挙げ、その直前の相手の発言を抜き出してください。
最後に、良かった問いを2つまで(なければ無理に挙げない)と、次の商談で変えることを1つだけ挙げてください。変えることは、複数の問いや手順を束ねず、どの場面で何と言うかまで書いた1つの行動にしてください。反省の言葉や、気持ちの持ち方の話は書かないでください。
うまく使うコツ:5つの観点は、前回の記事の「②初回商談の問いを設計する」で紹介した流れに沿っています。自社が長く話した場面は、直前の相手の発言とあわせて見ます。聞かれて答えていたのか、聞かれていない説明を続けていたのかで、話しすぎかどうかが分かります。翌週は、プロンプトの最後に「前回決めた変えること:〔 〕。今回の商談でできていたかも確かめてください」と書き足すと、変えたことが続いているかを確かめられます。
まとめ:次の初回商談が終わったら、当日中に①と②を試してみてください
商談の振り返りは、相手の言葉を材料に、判断の物差しを渡せば、AIに手伝ってもらえます。まずは、次の初回商談が終わったら、当日中に①で判定し、②でフォローメールを下書きしてみてください。③は、週に1回で十分です。
ただし、AIの判定は、渡した記録の質に左右されます。AIが引用した発言は、元の記録で確かめてください。「不明」と出た条件を相手に確かめることが、次の一手になります。

執筆:呂 逸云(COELU株式会社 執行役員COO)